「HOW3-1|株式市場の選択(2つの投資法)」ではボラティリティの視点で「漸進的投資法」と「飛躍的投資法」を紹介しました。
そこで、日本の株式市場において「漸進的投資法」と「飛躍的投資法」、それぞれに適した株式市場が何なのかを明瞭にしたいと思います。
2020年7月31日現在、日本取引所グループには3,715社もの企業が上場しています。
その内、東証一部上場数は2,173社と全体の58%を占め、JASDAQの19%(700社)と合わせるとこの二つの株式市場だけで全体の77%を占めます。
そして、時価総額に関する上場基準が東証一部では250億円以上、JASDAQでは50億円以上であり、このことが両市場において上場企業間の時価総額に乖離をもたらしています。
よって、東証一部およびJASDAQではより踏み込んだボラティリティの分析が必要です。
ボラティリティ分析の対象指標
ボラティリティ分析に東証一部とJASDAQに関連する指標を各3種類ずつ抽出しました。
東証一部の指標としてはTOPIX、TOPIX100、TOPIX1000を用います。
JASDAQの指標としてはJASDAQ、JASDAQ TOP20、JASDAQ-JStockを用います。
<指標の概要>
TOPIX:東証一部上場企業の全て対象とした株価指数。
TOPIX100:東証一部上場企業の時価総額・流動性の高い100銘柄を対象とした株価指数。東証一部時価総額の約60パーセントをカバーしている。
TOPIX1000:東証一部上場企業の時価総額・流動性の高い100銘柄を対象とした株価指数。
JASDAQ:JASDAQスタンダートとJASDAQグロースに上場する全ての企業を対象とした株価指数。
JASDAQ TOP20:JASDAQ上場企業の時価総額・流動性の高い20銘柄を対象とした株価指数。
JASDAQ-JStock:JASDAQ上場企業の時価総額・流動性の高い200銘柄から100銘柄を抽出した株価指数。
累積ボラティリティの分析
2020年7月31日を基準にした単位週での過去の累積ボラティリティを図表1にまとめます。

約4年6ヶ月間の(1-250週)累積ボラティリティでは予想に反してJASDAQが最もボラティリティが低い結果となりました。
この結果は、漸進的投資法によるインベストメントはJASDAQ市場が最も適していることを示唆しています。
しかし、JASDAQを細分化した上位20社で構成されるJASDAQ20や上位100社で構成されるJASDAQ-Jでは、主要指数であるJASDAQに比べてボラティリティが顕著に増加しています。
TOPIX100やTOPIX1000がTOPIXと比較してもボラティリティの乖離が皆無であることを考えると、JASDAQのボラティリティの安定度はTOPIXに対して欠けていることを示唆しています。
区分ボラティリティの分析
区分期間は50週毎とし、2020年7月31日を基準にした単位週での過去の区分ボラティリティを図表2にまとめます。

累積ボラティリティ同様に、総合的に見てJASDAQが最もボラティリティの小さい市場だと言えます。
しかし、JASDAQ20とJASDAQ-Jの区分毎のボラティリティの変動が大きいことからも、JASDAQのボラティリティの信頼度には疑問符が付きます。
TOPIX、TOPIX100、TOPIX1000は累積ボラティリティ同様に全ての区分で殆ど同じボラティリティの値が算出されました。